よしなしごと

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ヒメアノ〜ルを観てきました(ネタバレ有)

 ヒメアノ〜ルを観てきました。主演である森田さんが自信を持って薦める理由がわかったような気がします。

 以下ネタバレを含む感想になります。まだ観てない方は読まないでください。是非前情報0で観てください!









!ネタバレ含感想!

 今回こうしてはてなブログを使って感想を書きたいと思ったのは、感情を整理したかったのと、様々なシーンや表情が鮮明に残っている今のこの状況を残さずに寝てしまうのが勿体無い気がしたというのが理由です。

◼︎観終わった直後
 切ない、というのが観終わった直後1番の感想です。なんだかとっても切なかったな。
 観ている間はあんなにもずっと緊張し続けていたのに、最後の数分で全てを抜きとられて、映画館を出るときにはプラスの感情など一つもないのに、不思議と体と心が軽かったです。多分、最後の回想シーンがあまりに普通で、ありふれた光景で、優しかったからだと思う。あの優しい記憶で、森田くんの殺人を見せられていたときの遣る瀬無い思いは、違う方向への遣る瀬無さにシフトした気がします。
 空っぽにされて、直後は本当に言葉も出ずただボーッとしながら映画館を出ました。
 電車に乗っている間も、公開自慰をさせられているときの全てを諦めた顔と、お母さんを呼ぶ無邪気な声色と後ろ姿とが頭から離れなくて、情緒がぐちゃぐちゃになりました。

◼︎森田の殺人シーンについて
 森田の殺人シーンの中で一番印象に残っているのは警察官を殺すシーン。
 森田が殺人をしている場面って結構アップであることが多くて、安定したカメラワークで全体がうつっていたのはもしかしたらこれだけだったかもなと思います。わからないけど。
 警察官を刺している間森田は足をピンと伸ばしていて、とにかく必死で、運動神経がいいわけではないのだろうなという動き方でした。それが妙に森田という男を表しているようで、あの細く運動も出来なさそうな男が、殺すという目的のためだけに動くとあれだけ脅威となるのかと、背筋がゾクっとしました。

 それと、これは観ているときには気付けず後から気付いてゾッとしたことなのですが、森田が途中、ある夫婦の家に侵入して殺したシーンがあって、何故彼等は殺されたのだろうと疑問に思っていました。他の人たちと違って動機を理解できなかったのです。
 この殺人を振り返ると、旦那が家に帰ってきたら知らない男(森田)がカレーを食べていて、ふとソファの影を覗くとそこにはレイプされた妻の死体があり、逃げようとしたところを殺される。何日後なのかは分からないがその家で睡眠をとっているところに警察官が訪れ、怪しむ警察官にバレバレの嘘をついていたら肉塊を入れた袋が見つかり包丁で刺す、といった流れだったと思います。
 警察官含め他の人たちには見られたから、殺されそうになったから、情報を聞き出したかったから等の理由があったのに、この夫婦だけはどうして殺されたのかわかりませんでした。
 なので、映画を観終わって、帰宅してからふと理解してしまって、うわ!こわ!と思いました。お金がない中で性欲、食欲、睡眠欲の三大欲求を満たしたのか、と。
 勿論映画を観てすぐに理解した人もたくさんいたと思うのですが、私は時間差でその事実に気付いたので余計にぞわっとしました。

◼︎小休止:ユカについて
 ユカの絶妙なうざさ、最高だったなぁ。安藤さんという気持ち悪い人に好かれてしまっているということにもあまり同情できないぐらいには彼女もとても人間的で、この映画に登場する人物たちの人間臭さが、森田の普通なのに普通じゃない気味の悪さが際立たせたのだろうと感じました。
 ただ、森田がユカに執着していた理由だけは知りたかったかな。ユカへの執着の理由に岡田の存在は関係ないんですよね。岡田がユカと知り合う前から森田はユカをストーキングしていたから。ユカがこの映画における森田のバイオレンスなシーンの発端であり元凶であるから、その部分の説明が無かったことで少し映画に入り込むのに時間がかかったかなーとちょっぴり思いました。

◼︎あなたの涙はどこから?私は犬から
 当然のことながらここについて話したくてこの記事を書きました。
 ヒメアノ〜ルでは、この作品を観て泣かない人もたくさんいただろうし、泣くにしても泣きそうになるタイミングが人それぞれだったのではないかなぁと思います。
 ヒメアノ〜ルは観た人に与える感情がきっと多様で、この記事を読んでも共感しづらい、ピンとこない人はたくさんいるだろうと思います。それぐらいに複雑な気持ちにさせられる映画でした。
 窓から落ち、車に岡田を押し込み逃走した森田。岡田に言われた「森田くんなんでそんな風になっちゃったの?本当の森田くんはもっと優しい人でしょ」という言葉に激昂して後ろを振り向き岡田の腿を刺した後、運転するため前に視線を戻したら道路の上に白い大型犬と飼い主が立っていた。森田は咄嗟に避け、壁に突っ込んで大怪我を負う。
 私はこの、犬を避けた瞬間に、涙がボトボトと溢れ落ち止まらなくなりました。あれだけ人を殺し、刺した男の頭も平然と轢いて行く森田が、犬を轢きそうになって、"咄嗟に"ハンドルをきった。
 岡田の「森田くんはもっと優しい人でしょ」という言葉の直後だったのもあって、頭を打った後に15歳の森田と混濁したのが岡田の言葉とラストシーンに出てくる犬の記憶によるものなのかもしれないということも合わせて。
 森田のもとはあった筈の純粋で無垢な優しさが、それが踏みにじられ、踏み荒らされ、捨て去られて自らぐちゃぐちゃにしたであろう悲しい過去と共に突きつけられた気がしました。
 森田を生んだのは結局は森田自身で、決して共感なんて出来ないし、そうなった過程や事情は結局はっきりとは分からなかったけれど、ただのよくいる普通の、本当に普通の高校生だった森田がこうなってしまったのだという事実が切なくて、只管に遣る瀬なかったです。
 ゲーム返さなきゃ、お茶出してあげて、またいつでもおいでよ、って、ありふれた幸せな日常の一コマなのに、こんなに遠い。
 初めて話した時の会話で、岡田も森田と同様に高校に上がってから初めて話したのが自分なのだと知ったときの、恥ずかしそうに嬉しそうに笑う声に、他人が聞いたってこんなにも愛おしく感じる幸せな日々がこんな風に変わり果ててしまったのが哀しくて、切なくて。
 「岡田くん、またいつでも遊びに来てよ」と言って笑う森田の表情に、あぁ、森田はこんな顔をして笑う子だったのかと。岡田が、今までの森田のことも、これからの森田のことも、全部を一旦しまいこんで「うん」と頷いたことに、ほんの少しだけ救われた気持ちになりました。私がね。
 あの幸せな世界に生きていた森田くんをどうして守れなかったのかと悔しくなってきました。遣る瀬無いな。


 最後に、「このシーンのためにやりたいと思った」という森田剛さんの気持ちが痛いほどわかったし、このシーンのためにやりきってくれてありがとうと感謝の気持ちでいっぱいになりました。

 ヒメアノ〜ルを観られたVファンの方々の感想、心待ちにしております。

 それでは長々とお付き合いいただきありがとうございました。